じゃがめブログ

毒にはなるが薬にはならない、じゃがいもの芽のようなことだけを書き綴るブログです。

エンジニアが伸び悩む理由を考える

ブログや新聞記事にうっかり釣られて言及してしまうエントリー。
「社員になる」ということ:IT業界(笑)最底辺層生活 - CNET Japan
この人の記事、他のも読んで見て「釣りかも?」と思ったのですが・・・エンジニアってこういう人が多い気がするので言及してみます。なぜか、という辺りも含めて考えてみたいと思います。

キャリアチェンジは待っていても起こらない

会社に「一時的に」囲われていたIT土方たちは、インフラの仕事がなくなり、マネージメント層へキャリアアップすることもできず、冷遇され、陽に暗に肩たたきに遭い、再び転職市場に登場することになる。

「社員になる」ということ:IT業界(笑)最底辺層生活 - CNET Japan

『インフラの仕事がなくなること』と『マネージャー層へのキャリアアップが出来なくなる』ことは、はっきりいって無関係です。もしインフラの仕事がなくなるからマネージャーになれないと思っているのだとしたら、よっぽどラッキーなことでもない限り自力ではマネージャーになれないでしょう。

何故なら

仕事を振る上司が『出来る』と認識しない
職種間で必要な能力が違う

からです。一個ずつ見てみましょう。

仕事を振る上司が『出来る』と認識しない

仕事というのは、漫然とこなしているだけでは同じことの繰り返ししか出来ません。なぜなら、社員が出来ることで且つ上司がやらせたいことしか仕事として回ってきませんから。しかも「出来ること」は上司が「こいつこれくらいなら出来そうだな」と認識していると言うだけのものです。

もし仮にあなたの部下が、地頭が良さそうだがマネージャー経験がない人間だったとして、プロジェクトのマネージメントを任せるでしょうか?技術には詳しいかも知れないがそれ以外が未知数の人間だったとして、マネージャーさせられますか?

職種間で必要な能力が違う

エンジニアリングとマネージメントには必要な能力が違います。フレンチの料理人は日本料理をやらせてもそこそこうまくいくかも知れません。が、それでお金を取れるかどうかはやってみないと解りませんし、恐らくそういうレベルでないことのほうが多いでしょう。そういった差が、職種間にはあるものです。


ここに「マネージャーになるためにマネージャー経験がないといけない」というパラドクスが発生します。これは『マネージャー』の部分を読み替えてもらえれば他の職種でも当てはまるんじゃないでしょうか。古くから存在する大会社であれば、実務経験を積ませる代わりに人材育成やピックアップのための研修などをおこなったり、コストになることを覚悟で実務をさせてみるなど可能ですが、中小企業やベンチャー系大企業であれば殆ど望むことはできないでしょう。
『人はその制服どおりの人間になる。』とはナポレオンの言葉ですが、その制服を着せると言うこと自体が会社にとって難しいことなんです。

ではどうするのか?『やってしまう』というのが私の経験上、一番簡単で効率的でした。マネージャーがやっている仕事を巻き取ってしまう。どんな人だって完璧に仕事をこなすことは出来ないものです。改善点は幾らだってある。言葉は悪いですが、そこにつけこむんです。

例えば、「○○のプロジェクト進捗管理の方法に問題があったので、改修案を作ってみたんですけど見てもらっていいですか?」といって渡してみたり、「このプロジェクト規模ならバグトラックツール入れてみたらどうでしょうか。私のマシンのローカルに入れてみたんで試してみてもらっていいですか?」と言う風に少しずつとっていくなど。
もちろん、マネージャーによっては良い顔をしない人も居ますし、手柄を横取りしてしまう人もいるでしょう。そこは陣取り合戦を楽しむつもりで挑むことになります*1

なんにせよ、インフラならインフラ、開発なら開発をずっとやっているだけでマネージャーに確実にキャリアアップ出来るなんてことはありません。出来たとして、無能としてそこで停滞するというのがオチです。

重要なことなので再度書きますが、黙って会社に滅私奉公しているだけでどんどんキャリアアップ出来る、なんてことはありません。もしそう思っている人が居るとしたら、その人は会社が何を求めていているのか解っていない可能性があります。

責任とは

でもね、僕が常々オカしいと思っているのは、「(ぜひきてくれ!)でも、いちおうウチの会社の試験は受けてもらうから。。」「形式的なもんだから」
とか、言うわけね。

その会社の、それなりの立場のヒトが、自分の責任で「ぜひきてくれ!」といっていただけるんだったら、せめて「学科試験免除」ぐらいの優待条件は、つけてほしいと思うんだけど。

僕は、それが、ヒトとしてアタリマエの筋の通し方だと思うんだけどね。
「ぜひきてくれ、でも、皆と同じ一次試験から受けてね」じゃあねえ。。
そういう会社ってどうなんだろ、って、思ったりもするけど。

「社員になる」ということ:IT業界(笑)最底辺層生活 - CNET Japan

これは何がオカしいのか、筋が通ってないのか解りませんでした。
しっかりした会社であればあるほど、試験は受けさせないといけないでしょう。一社員の気持ちひとつで例外を作るのが良い会社で、筋が通っているおこないだと言う事でしょうか?

そもそも、うちの会社に来てくれ!と発言することの責任ってなんでしょうか。

責任という言葉は便利ではあるのですが、たぶんにあいまいな要素を含んでいるので、私が考える『責任』で一旦定義しておきたいと思います。
責任というのは、『自由に選択できる複数の選択肢の中から選択する権限を与えられた者がその権限を行使したときの行使理由を説明する義務、およびその選択をした時に選択者が得うる情報と権限の範囲』と私は考えています。
どういうことかと言いますと。
例えば、車を購入するのに候補を3台まで絞り込んであるとします。3台は予算的にも利用方法としても生活スタイルに合っているという判断で絞り込んでいます。このとき、候補から1台に決定するのは自由ですし、誰からの制限もありません。そこで自分が知りうる情報でどれがいいか考え始めます。「こっちはデザインが良いけど足回りがちょっと弱いし・・・」。私は車にそれほど興味が無いので*2よく解りませんが、こんな感じでしょうか。そしてめでたく購入!
もしこの購入した人に購入責任があるとしたら、それは知りうる情報の中で選択した結果に対して、だということです。
なので、スペックが不足していていまいちだとか、デザインがやっぱり気に食わないとかは購入者の責任。初期不良が頻発して使い物にならないなどは製作者側の責任、となるわけです。

「うちに来て欲しい」と発言する人は、複数居る人材の中から選抜しているのだから、その過程で知りうる範囲内で理由を説明する義務があります。で、それって何かというと、多くの場合「いや〜、彼って一緒に仕事して良いと思ったんですよ〜」くらいのものなんですよ。っていうかそれ以上のことって解らなくないですか?だって「うちに来てくれ!」って発言する人が見ることが出来るポイントって、印象とその対象の得意分野での性能くらいですよ。会社が求める能力があるかどうかまで測ることは基本的に無理だと思います。
そして、その責任範囲で会社がテストを免除して雇ってしまうにはリスクが大きすぎます。であれば会社がそこにテストなどのリスクヘッジ(というより判断基準)を挟むのは当たり前のことだと思うんですけど。

「彼をうちで雇うためにリスクは私が引き受けます。もし彼が期待にそぐわない人材で価値を生み出さないなら私の給料を0にしても良いです」とまで言っていて、実際そうできるのであれば、テスト免除する考えはなくはないかもしれませんけれどね。それでも例外を作るリスクを考えたらやっぱり良いことではないでしょう。お金が「在るべきところに在るように」流れていないというのも良いことだとは思えませんし。

会社が何もしてくれないとかいう人は、それが「会社の責任」でおこなうべき事なのかどうかを考えてみたほうがいいのではないでしょうか。

求める前に生み出さないと何も始まらない

それともうひとつ、ひとつ某社の例外をのぞき、必ず「(ぜひきてくれ!)でも、給料は下がると思うけど。。」と、言われた。

それを聞いて僕は、家族をヒッシこいて養っている自分をバカにしてんのか? と、思ったけどね。。

給料激減してまでアンタの会社に行くメリットは、なんなのか?

と問うたときに納得ゆく回答をしてくれる会社は、あるのだろうか?

(中略)

「ぜひきてくれ!」というんだったらそれなりのカネ(そして、誠意)を用意すべきではないのか?

「社員になる」ということ:IT業界(笑)最底辺層生活 - CNET Japan

なぜ、これまで何の実績も挙げていない人間にお金を渡さないと行けないのか?そのことの方を先に説明して欲しいところです。
『功ある者に賞を、徳ある者に位を」とはよく言いますが、では「まだ会社に属していない」「会社に対して利益を上げていない」「会社として人材の質が見えていない」人には何を与えればいいのでしょうか。推薦するいち社員が「彼は見どころが有って優秀なんですよ!」というその言葉だけを信じて、会社から何を出せというのでしょう?文句を言う前に結果を出してからではないのか、という気がします。

ちょっといやらしいことを言ってしまうと、最初は給料(特に基本給)を出したくないという会社は多いです。何故なら、基本給は今後減らすことが容易ではない固定出費になってしまうからです。
労働基準法に則る限り、使用者が独断で給料を下げることは出来ません。しかも使用者が被雇用者を解雇することは容易ではありません。なので、基本給を決めてしまうと、その額はずっと払い続けないといけなくなります。労働者は法によって保護されています。

とまあそのような状態なので、経営者側はどこの馬の骨とも知らない人間に基本給をそんなに出したくない訳です。だから試用期間とかあるわけで。
優秀で名を馳せていて会社に必要な人材で、競合他社には取られたくない、給料を幾ら払ってでも欲しいと思わせる人材であるならまだしも、そんな人材なんでしょうか?もしそんな人材でないのなら、最初に触れたように仕事を巻き取ってキャリアを積むとこからまず始めるべきではないでしょうか。

なんちゃってまとめ

給料の3倍稼げといわれる、とコメント欄で言われていますね。まあそれは大げさだとしても、給料の2倍はコストが掛かっている。給料が30万円/月だとして、60万/月を稼がないと自分の食い扶持すら稼げていない。会社を大きくすることに何の寄与もしておらず、マイナス方向に何かが触れたときは会社にとって負担になる。なのにその大前提に気付かないまま権利だけは主張する。そういう人は本当に多い。
それって、エンジニアにとっても不幸なことだと思うんですけれどね。少なくとも自分のことは見えていないし、(本来戦う相手ではないはずなのに敵視してしまっている)会社のこともよく解っていない。こういう人はいつまで経っても経営者からは好かれることも重用されることもありません。最初にポジショニングされた職種からキャリアアップすることがとても難しいんですね。これは正社員だろうが契約だろうが関係ないと思います。


なんでそうなっちゃうのかな。エンジニアの場合は自分の活動がどれだけの利益を生み出しているかが解り辛いっていうのが根底にあるのかも知れません。そこら辺はまだまだ改善が出来そうです。秀逸な評価方法とか様々なものが必要だとは思いますけれど、不可能ではなさそうですしね。

*1:本来、協調する関係の中で取り合いをするというのも望ましい話では無いですけれどね。

*2:なら何故この例えにしたのかは謎